『新星座巡礼』 野尻抱影 (中公文庫) (前編) [野尻抱影]

 国立天文台のサイトに、「ほしぞら情報」というページがあります。そこに「しし座流星群をみよう!」という記事が載っていました。今月の17日の深夜から18日の明け方にかけて、しし座流星群が接近するそうです。
 実は、このことを知って、久々に手に取った本があります。『新星座巡礼』という本です。
 この本は、数年前、文庫本だけど素敵な装丁の本だなぁと思って手に取り、ぱらぱらと、中の綺麗な挿絵や星座の図を見ただけで、即購入したものです。
 ちょうどその頃、忘れてしまったいくつかの星座の名前を思い出したかったか何かで、星に関する本を探していたのだったと思うのですが、とにかく、星への興味が不思議と昂ぶっている時で、この本との出会いを嬉しく感じたのを覚えています。

 この本の第一章は、「星座四季」と題されていて、その通り、四季の星座を野尻さんが解説されているのですが、春からではなく冬で始まっています。私は、この「冬の星空」という一番最初の文章がとても好きです。
 下界の凍てつく冬の厳しさに、足早に家に急ぐ人々を尻目に、凍った庭に出て、夜空の星を目を輝かして見つめる野尻さんの姿が目に浮かぶような、素敵な文章です。

 何かとても好きなことのある人が、そのことについて語る文章を読んでいると、その方の持っている澄んだ世界観に包まれるようで、こちらも幸せな気分になることがありますが、野尻さんのこの文章を読んでいると、本当にそんな心地がします。

 野尻さんは、1977年に、既にお亡くなりになられていて、この本も、もともとは大正14年(1925年)に発行された『星座巡礼』を、32年後に、72歳のご本人の手によって、「なるべくその原型を残しながら、天文の知識はすべて最近のものによって」(本書はしがきより引用)修正を行ったものを底本としています。現代に入り、旧字旧仮名遣いが新字新仮名遣いに改められていますが、文章が、最近の本とは違う格調を湛えていて、よりロマンチックな感じがします。
 その文章の調子について、72歳のご本人は、「今読むと調子が高く気恥ずかしいものですが、昔の読者へ献げるつもりで、わざと残して置きました。」(本書はしがきより引用)と書かれています。
 星を讃える言葉の数々がまっすぐで澄んでいて、はしがきの言葉も真摯で温かく、そういったお人柄を感じるのも、この本の魅力です。
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whitenote

本記事は、2009年11月17日に、本の魅力を伝えるのにまだ書き足りなかったと思った点がいくつかあったため、加筆・修正をしました。
by whitenote (2009-11-17 19:31) 

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