『猫だましい』 河合隼雄 (新潮文庫) [河合隼雄]

 臨床心理学者の河合隼雄さんの書かれた本です。神話や物語に登場する様々な猫の姿を、「たましいの顕現とも思える」と語った上で、古今東西の様々な猫物語を沢山とりあげられています。
 「人と魂の関係性の回復を援助する」ことを生業としている方ならではの視点で書かれていて、臨床心理に関連付けての考察もあるかと思えば、純粋に読み手として物語を楽しんでいらっしゃることも伝わってきて、本好きとして、著者への親しみを覚えました。
 トリック・スターとしての『長靴をはいた猫』や、村上春樹さんが翻訳をされている『空飛び猫』に見る、親子関係や緘黙児への接し方などは、学問的な話にも及んでいて、面白く読めましたし、『100万回生きたねこ』については、「これに解説をつけるのはヤボ」と、素直に感動する心を語られていて、「生と死」というテーマに対しては、単純な結論付けを避けていらっしゃいました。実は幼いころ私自身『100万回生きたねこ』を読んだことがなかったのですが、この「猫だましい」がきっかけて是非原作を手に取りたいと思いました。
 他にも様々な物語が独自の切り口で語られていて、「猫好き」「本好き」の方や、臨床心理に興味のある方、子供と接する機会のある方も興味深く読むことができるのではないかと思います。

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